大学ゴルフ授業研究会

我が大学のゴルフ授業 ~東大のゴルフ授業~

※この記事は掲載元(月刊ゴルフ用品界)の許可を頂いて転載しています。
掲載元 月刊ゴルフ用品界 3月号

東京大学

1877年に創設された日本を代表する国立大学。大学の略称は東大(とうだい)。世界の公共性に奉仕する大学として世界最高水準の教育・研究を維持・発展させることを目標としており、現在までに卒業生の中から8名のノーベル賞受賞者を輩出している。学生数は学部および大学院を合わせて約28,000名。伝統的に、学部教育の基礎として教養(リベラル・アーツ)教育を重視しており、全学生の必修授業として、教養学部スポーツ・身体運動部会の担当する身体運動・健康科学実習がある。2016年5月、全学的研究組織としてスポーツ先端科学研究拠点が開設された。

東京大学准教授 工藤和俊


工藤和俊(くどう・かずとし)
1967年群馬県生まれ。1998年、東京大学大学院総合文化研究科生命環境科学系修了、博士(学術)取得。2002-2003年、米国コネチカット大学 知覚と行為の生態学研究センター客員研究員。東京大学大学院総合文化研究科生命環境科学系助手、助教、准教授を経て現在、東京大学大学院情報学環・学際情報学府准教授。

担当科目は、1年生を対象とした身体運動・健康科学実習、身体運動科学講義、2年生を対象とした身体運動実習、3・4年生を対象としたスポーツ心理学講義等。実技種目としては、ゴルフ、バドミントン、スノーボード等を担当している。

研究分野はスポ―ツ心理学/運動認知神経科学であり、スポーツ、音楽演奏、ダンスにおける巧みな身体操作について、動作・筋活動・心拍・発汗等の生体情報計測および非線形力学系モデル・ベイズ統計モデルなどの数理モデルを用いた研究を行っている。2010年、トレーニング科学会トレーニング科学研究賞受賞。主な著書・訳書に「身体:環境とのエンカウンター」(東京大学出版会、2013、分担執筆)、「巧みさとその発達」(金子書房、2003)がある。所属学会は、日本体育学会、日本スポーツ心理学会、日本生態心理学会、日本発育発達学会、日本神経科学学会他。

授業風景

東京大学では、2年生を対象とした選択授業「スポーツ身体運動実習」の1種目としてゴルフ授業を実施しています。実技種目多様化の一環としてゴルフ実技を開始したのが1994年ですので、導入以来20年以上経ち、受講生の総計は3000名を超えています。1コマの定員は40名ですが、希望者が多く抽選になることもしばしばあります。

授業は、学内実習と学外コース実習から構成されています。学内実習は駒場キャンパスの人工芝ホッケー場を利用し、パッティング、アプローチ、練習ボール(フライトボール)を利用したアイアンショット練習等を行い、適宜iPadを用いたスイングフォームチェックを実施しています。 雨天時は体育館内でのパッティング・アプローチ練習、バランストレーニングなどを行っています。また、毎回プリントを配布し、ルールやマナーの理解を促しています。

学外コース実習は、千葉県千葉市にある東京大学検見川総合運動場の7ホールショートコースを利用し、実球でのショット練習(写真1)、バンカー練習(写真2)、パッティング練習の後に、7ホールのラウンドを行います。このショートコースはクロスカントリーの練習場としても利用されているためアップダウンに富んでいます。そのため打ち上げや打ち下ろしなどが多く、平坦で広いゴルフ場をイメージしていた学生は面喰います。それでもラウンド後の顔は満足感にあふれており、生涯スポーツとしてのゴルフを体験する良い機会になっていると感じます。

先生の気持ち

受講生は約9割が未経験者ですので、学生にはまず「ゴルフは感覚のスポーツ」であることを強調します。若い学生はとにかく「思い切り振って遠くに飛ばす」練習をしたがるのですが、「軽く振って当たらないものは思い切り振っても絶対に当たらないよ」と辛抱強く言い聞かせています。

初心者は一般にクラブを握りしめてしまいがちですが、強く握ると手のひらからインパクトの感覚が伝わってこなくなりますので、上達の妨げになってしまいます。そこでパッティング練習では、クラブを軽く握って「インパクトを感じる」ことから始め、芯に当たった感触が分かるようになってから距離や方向の打ち分けを練習しています。また、パッティングでは、カップの見方や歩き方など、距離感をつかむ練習をとりいれています。なおアイアンショットではクラブのすっぽ抜け防止のために特注のストッパーを使用しています。学外ラウンド実習に向けた練習としては、周りの人が見ている中でのティーショット練習や、目の前にハザードを置いてのバンカー越えを想定した練習などを取り入れています。そのような練習を通して、はじめは満足に当たらなかった学生も、回を重ねるうちに会心の当たりが出て苦笑いが笑顔に変わっていくと、教える側としても嬉しくなります。

また、少数ですがゴルフ経験者やゴルフ部の学生も授業を履修します。これらの学生には、周りの初心者に対するアドバイスを積極的に行うよう指導しています。また、iPadを用いて学生一人ひとりのフォームをチェックすると、経験者であってもクロスシャフトや頭の上下動など、本人の気づかなかった欠点がしばしば見つかります。これらの経験をとおして、上達に向けて様々な工夫をするという姿勢が社会に出てからも役に立つことを願っています。