1.大学ゴルフ授業への用品提供事業の概要
2016年6月27日、(公社)全国大学体育連合(大体連)、(公社)日本プロゴルフ協会(PGA)、ゴルフ市場活性化委員会(GMAC)が産学連携協定を結んだ。
この協定の目玉の一つに、(一社)日本ゴルフ用品協会(JGGA)に加盟するゴルフ用品メーカー各社による大学ゴルフ授業に対する用品(クラブ)提供事業がある。
これは、JGGA加盟企業のご厚意によるものであり、大体連会員校のうちゴルフ授業を展開している大学にゴルフクラブを提供するものである。本事業を通じて、大学のゴルフ授業が発展し、ゴルフ市場全体が活性化することが大いに期待されている。
なお、本事業における実務は大学ゴルフ授業研究会が執り行うこととなっており、研究会の世話人の一人である著者が担当として大学とJGGA双方の窓口となっている。
2.ゴルフ用品提供の流れ
本事業におけるゴルフクラブ提供の流れについては図1に示した通りである。まず、提供を希望する大学は申請書に同意書を添えて申請手続きを行う(上限40本、うちショートアイアン10本まで)。
次に、大学ゴルフ授業研究会がこれらを取りまとめ、供給量とのマッチングを行ったのち、JGGAに発送手続きを依頼する。JGGAは、発送依頼に基づき着払いにて大学へ発送するという流れになっている。
なお大学には、提供を受けたクラブを用いた授業の終了後、報告書および学生のアンケートを提出することが義務づけられている。
またその他の申請要件として、大体連大学会員であることに加え、事務職員のゴルフ用具保管責任者の設定、提供クラブの権利関係および保管に関する同意書の提出がある。以上の手続きにより、大学としては送料の負担だけで、クラブの提供を受けることができることとなっている。
3.現状の様子
2016年11月14日現在、22大学から申請があった(表1)。本事業開始当初すぐに18大学から申請があり、その後、夏休みを経て4大学から申請があったが、当初の予想を裏切って低調となっている。
申請内訳をみてみると、男性用ドライバーの希望が最も多く(133本)、女性用7番アイアンが最も少なかった(左利き用ウッドについては当初在庫が無く、2回目の供給時に追加されたものであり、大学に対して十分にアナウンスがされていないためカウントから除外した。)また申請に対して最も供給量が少なかったのは女性用ドライバーであった(-303.6%;113 vs 28: 申請数 vs 供給数)。
なお、7番アイアンについては男性用・女性用ともに申請に対して供給が多く、供給量に対する配布率は9.6%にとどまっている。
4.学生の反応>
申請要件としての学生対象アンケートでは、提供クラブと本事業への感想、ゴルフへの関心について調査している。2016年11月15日現在、2大学37名(男子9名、女子28名)より回答を得ている。
回答者のゴルフ経験は、1年未満の3名を除き全てゴルフ未経験であり、ラウンド経験がある者は1名であった。ゴルフ授業受講以降、購入したゴルフ用品は、グローブが2名、ゴルフウェアが2名で、33名は何も購入していない。
ゴルフ授業を契機として、練習場に行った者は4名、TV観戦をした者は1名、インターネットによる情報検索をした者が1名であり、ゴルフに関連する活動を何もしていない者が32名であった (複数回答)。また、今後ゴルフを継続したいと考える学生は5名、継続しないとしたのは10名であった(どちらとも言えないは22名)。
最も多かった「どちらとも言えない」の理由として、「ゴルフクラブを持っていない (1名)」「近くにゴルフをする場所がない (1名)」「運動によさそう(1名)」と肯定・否定両面の意見が挙げられた。継続したい理由には、「楽しかったから (1名)」「上手くなりたい (1名)」が挙げられ、継続しない理由を挙げる者はいなかった。
用品提供については、その説明を受けたとする者は15名であり、半数以上の学生(22名)が担当教員より本事業について説明を受けていないことが明らかとなった。一方で、提供クラブに関する感想・意見では、「感謝している(7名)」「使いやすかった(6名)」「良かった(4名)」の順に多かった。反面、「重さが厳しい(1名; 女子)」という意見もあり、女性用クラブが十分に行き渡らなかったことが示唆された。
5.課題と解決策等
学生アンケートの結果から、学生の本事業に対する反応は概ね良好であるが、「特になし」と回答した者が12名いたことは見過ごすことができない。これは担当教員による学生に対する本事業のアナウンスが足りないことに起因していると考えられる。
学生がゴルフに対して親近感を持つためにも、本事業が業界を挙げてのバックアップ体制によるものであることをきちんとアナウンスするよう周知徹底をしていかなくてはならない。
一方、著者が提供クラブを授業で使用した際の学生の反応であるが、本事業の説明した段階では非常に盛り上がった。しかしながら、実際に使用する段階では、受講生数に対して数量が不足することが判明した。その結果、提供クラブが行き渡らなかった学生には明らかに落胆の様子がうかがえた。
学生の期待を裏切らないためには、受講者数に見合った数量が必要である。すなわち、申請に対して満額回答しなくては学生の満足度にはつながらない。一律の申請上限ではなく、受講者数を考慮していくことが必要であろう。
また提供クラブの配分に当たり需給調整を必要として原因の一つに、7番アイアンの在庫が抱負であることが挙げられる。これを解消するために研究会としては、大学に対して7番アイアンを積極的に使用できる様な授業内容を提供(開発)するとともに、業界に対して「試打クラブ=7番アイアン」という常識を変えていただけないかと考えている。
両者が調整をすることで、大学としては多様なクラブの提供を受けることができ、多様なゴルフ授業の展開が可能となる。なお、現時点で申請大学数が低調なっている点については、手続きの煩雑さと大体連会員校であることの縛りが大きいと考えている。
これら、いずれの課題についても、本事業において中立的な立場である本研究会が、「何を優先すべきか」という視点で関係各所と調整を行い、長期的かつ全体の利益に結びつけていくことが肝要であると考えている。
末筆となりますが、業界各位におかれましては対してはこれまでのご厚意に感謝すると共に、引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。
以上
髙𣘺 宗良(たかはし むねよし)
1969年東京都生まれ。
博士(教育学)、博士(保健学)。
鎌倉女子大学児童学部准教授、武蔵野美術大学兼任講師。
専門は、スポーツ方法学、安全教育学。
安全教育学と授業改善の視点からゴルフについて研究をしている。
日本ゴルフ学会理事・関東支部理事長、大学ゴルフ授業研究会世話人。
日本運動・スポーツ科学学会理事。
(公財)日本水泳連盟学生委員会関東支部副支部長、地域指導者委員会委員。
三鷹市スポーツ推進審議会委員。