大学ゴルフ授業研究会

我が大学のゴルフ授業7 ~感覚を大切にしたスイングづくりのゴルフ文化コース~舛本直文(首都大学東京特任教授)

※この記事は掲載元(月刊ゴルフ用品界 GEW)の許可を頂いて転載しています。
掲載元 月刊ゴルフ用品界 7月号(見本誌の申し込みはこちらから)

大学の紹介

「首都大学東京」は、石原都知事時代の2005(平成17)年4月に、都立の4つの大学「東京都立大学」「東京都立科学技術大学」「東京都立保健科学大学」「東京都立短期大学」を再編・統合して設置された新しい公立大学である。「大都市における人間社会の理想像の追求」を基本理念としている。

4学部で構成され、京王相模原線の南大沢キャンパスを主に、日野(システムデザイン学部)、荒川(健康福祉学部)の両キャンパスを抱えている。学生定員は1学年1,570名であり、全学で約6,000名強の学生が在籍している。平成30年には学部再編を予定。緑豊かな南大沢の広大なキャンパスには各種のスポーツ施設が整っており、ゴルフ練習場にはバンカーも備えている。

授業風景

本学のゴルフ授業は選択の体育実技のコマで開講され、定員は24名。8打席のドライビングレンジと野芝の陸上競技場、人工芝の多目的運動場を利用して実施しています。

身体運動演習ではスイングづくりとゴルフ文化の理論の理解、スポーツ実習では模擬コースラウンドでエチケット・マナーやルールの理解を中心に授業展開しました。実際のゴルフコースでのラウンドは行っていません。バンカー練習場もありますが、そこまでの技術は求めていません。

本学の授業風景(緒方貴浩先生)

受講生のほとんどが初心者であるため、授業の最初2回は人工芝の運動場でスナッグゴルフの用具を使ってグリップやフェースの向きが分かりやすくなる工夫をしています。クラブを逆に使った逆クラブスイングによって、スイング軌跡や体重移動、ボディターンの感覚を確認しながら基本的なスイングづくりを行います。

ドライバー練習は、陸上競技場でケイマンボールを打っていました。模擬コースラウンドではSWを利用し、ターゲットバードのゴールを目標にショットしていました。雨天時には、体育館でパッティング練習に当てています。

スナッグゴルフの用具で導入

ゴルフ関連の障害を防ぐために、授業の最初に10分間ストレッチングを取り入れ、身体感覚やスイング時の感覚を鋭敏にし、その身体感覚や変容はラーニング・ポートフォリオとして記録していました。

先生の気持ち

以前、首都大のゴルフ授業を担当していた時には、演習では「感覚を大切にしたスイングづくり」を大切にしていました。

特に、インパクト時のスィートスポット感覚、フィニッシュ時のウエイトシフト感覚、スイング全体の快感(打感、打球音、なめらかなスイング、イメージ通りの球筋)などの身体感覚をチェックしながらスイングを作るように指導していました。

それは、これらの感覚を下に、自分自身でアドレスやスイングプレーンなどの修正ができるようにするためです。

また、SWでのボール突き(リフティング)を取り入れて、スィートスポット感覚とインパクトがどちらにずれたかが分かるような鋭敏な感覚を磨く工夫もしていました。これは、パーフェクトショットした時のインパクト感(打感)を覚えてもらうためです。このリフティングの最終目標回数は20回でしたが、なかなか難しい課題のようでした。

授業では、ただ打てるようになるだけでなく、ゴルフを文化として理解することを大切にしていました。

例えば、何故ゴルフ競技では審判がいないのか、ルールブックでエチケットから書かれている理由は何か、ゴルフプレーの2大精神である「あるがまま打て Play the ball as it lies」と「ゴルファーの正直Golfer’s honesty」の意味や重要性の理解、ゴルフクラブの愛称や使い分けかた等についても毎回少しずつ授業内容に取り入れるようにし、「ゴルフ文化コース」として理論と実践の統合を目指していました。

現在、首都大学のゴルフ授業は大学ゴルフ授業研究会の世話人の一人でもある緒方貴浩先生(帝京大学)にお願いし、私は玉川大学で授業をしています。

先生の紹介

舛本直文(ますもと・なおふみ)

1950年広島県生まれ。1973年広島大学教育学部卒、1977年東京教育大学大学院(体育学研究科)修了後、筑波大学体育センター勤務。1981年より東京都立大学を経て首都大学東京。2016年に定年退職後、現在は特任教授としてオリンピックの教育研究に従事。学位:博士(体育科学、1999年筑波大学)。

専門はスポーツ哲学、スポーツ映像研究、オリンピック研究。現在は、「(自称)オリンピズムの伝道師」としてオリンピック・パラリンピック教育への支援やオリンピックの平和運動の一環として人権啓発関係の仕事に従事している。NPO法人日本オリンピック・アカデミー副会長(研究委員会委員長)等を務める。

主著に『オリンピックのすべて』(2008年訳著、大修館書店)等。

所属学会は、日本体育学会体育哲学専門領域、日本体育・スポーツ哲学会(理事)、日本スポーツ社会学会、日本スポーツ学会(運営理事)、日本ゴルフ学会(関東支部副支部長)、国際スポーツ哲学会、国際オリンピック史家学会等。

東京都立大学時代からゴルフの授業を担当。公開講座のゴルフ指導も担当し、公開講座修了生の自主グループ「トカレゴルフ?楽部」の顧問として指導している。現在は、玉川大学の非常勤講師としてゴルフの授業を担当している。