大学ゴルフ授業研究会

我が大学のゴルフ授業14 ~社会人基礎力の養成 (人間力の養成) を第一目的としたゴルフ授業~金田 晃一(千葉工業大学)

※この記事は掲載元(月刊ゴルフ用品界 GEW)の許可を頂いて転載しています。
掲載元 月刊ゴルフ用品界 2018年2月号(見本誌の申し込みはこちらから)

大学の紹介

1942年に興亜工業大学として開学した、日本で最も歴史のある私立の工科系大学 (本校:千葉県習志野市)。

現在は平成16年4月より、5学部17学科という新たな学びのカタチへ生まれ変わり、カリキュラムがより専門性に特化し、好学心を更に高める学びへと進化している。

「世界文化に技術で貢献する」を建学の精神とし、「広く世界に知識を求める好学心を持つ人材の育成」「自ら学び、自ら思索し創造する人材の育成」「自由闊達、機智縦横な人材の育成」「善隣及び協力をつくり上げていく人材の育成」「高度な専門知識と豊かな教養を持つ、学理及び技術に優秀な人材の育成」を目指している。教職員数はおよそ900人弱。

2027 年に迎える創立 100 周年に向け、私立理工系のトップランナーとしての社会的評価を得るべく、様々な取り組みを進めています。

授業風景

現在、集中型の授業でゴルフに取り組んでいます。千葉工業大学の茜浜運動施設には人工芝で造られたラグビー場があり、ここでショートアイアンを用いた授業を行います。

屋内練習場にはゴルフゲージがあり、雨天時やロングアイアンやドライバーを用いる際に利用しています。受講生は入学時に貸与されたiPadminiを用いてお互いの動作を撮影し、グループ内でディスカッションをかわしながらスイングの改善を行っています。

また、EPSON社のM-Tracer for Golfを用いた詳細なスイング解析によるフィードバックもディスカッションの材料となっています。

授業中にはお互いの動作を撮影し、ディスカッションを行います

授業中にはお互いの動作を撮影し、ディスカッションを行います

授業では、ゴルフ技術の向上はもとより、社会人基礎力の養成を主な目的としています。従って、グループ内でコミュニケーションを取り、課題発見・解決能力の育成、教え合いや学び合いを中心に行っています。

また、身体運動を通して感じたことなどを言語化する教室での授業も行っています。

授業の途中には民間のゴルフ練習場での授業や、最後には御宿にある本学の研修センターへの宿泊を兼ねた大原・御宿ゴルフコースでのラウンド授業(ハーフ)も行います。

学外での授業を通してゴルフの種目特性に触れたり、社会のマナーなどを意識することが、社会人基礎力の養成に大いに役立つと考えています。実際に、社会人基礎力のアンケート調査によって、受講生の社会人基礎力は改善するという結果も得られています。

ゴルフクラブでの授業では、クラブにある様々な施設を利用しながら学習します

ゴルフクラブでの授業では、クラブにある様々な施設を利用しながら学習します

先生の気持ち

以前はゴルフの授業を半期授業の中でも行っていました。しかし、半期の授業は週に1回90分のみであり、準備や片付けの時間、施設の移動時間などを考えると決して効率の良い授業とは言えませんでした。

また、屋外のラグビー場での練習ではショートアイアンしか用いることができないことや、学外で授業を行うことができないために受講生のモチベーションを維持することが非常に困難でした。

しかし、集中型の授業では一回につき長時間練習ができることや、最終的にハーフではありますが本コースをラウンドするという目標(ある意味プレッシャー)ができるため、受講生はそれなりに熱心に取り組むこととなります。

ゴルフの種目特性を生かすにはやはり集中型が良いのではないかと考えます。

特に本コースでの体験ができることは受講生にとっては大きな経験になると考えています。今の日本では、社会人になってからゴルフを行う機会が出てくることが多くなります。

その時に、学生時代に少しでもクラブハウスやラウンドの経験をしておくことが、とても役に立つと考えています。ゴルフそのものへの興味はさることながら、社会経験を積ませ、なれさせることができるのもゴルフの種目特性の一つだと思います。

本授業は社会人基礎力の養成を第一の目的にしています。それは、大学における教養科目のスポーツ科目が今後どうあるべきかを考えた結果です。

健康増進や技術向上も重要ですが、わずかな授業期間で学ぶ内容として、教養科目としてのスポーツ科目の意義は人間力の養成である、というのが千葉工業大学の考え方です。スポーツ科目を通じて受講生が人間力や社会人基礎力について意識することは、彼らの将来に役立つものであると思います。

先生の紹介

千葉工業大学先進工学部 准教授
金田晃一(かねだ・こういち)

金田 晃一

金田 晃一

1980年生まれ。兵庫県立長田高等学校卒業。筑波大学体育専門学群、同大学院修士課程体育研究科修了、同大学院博士課程人間総合科学研究科修了、慶應義塾大学政策・メディア研究科特別研究助教、日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、2014年より千葉工業大学に着任。担当科目は、スポーツ科学、身体と健康の科学、課題探究セミナーなど。

主に水泳・水中運動時の筋活動計測や動作計測を行っており、その結果から中高齢者の健康増進運動に役立つ水中運動プログラムについて考案している。また、これまで多くの健康運動教室にて中高齢者や要支援・要介護認定者への運動指導を行ってきた。現在はスポーツ工学やスポーツ情報科学分野へと研究活動を拡大中。

千葉工業大学に赴任後は教養必修科目のスポーツ科学の授業として、バドミントン、卓球、サッカー、トレーニング、スノースポーツ、ゴルフ、フラッグフットボールなど様々な種目を担当。また、教養科目でのゼミナール形式の授業である課題探究セミナーでは、ジャグリングを通じて身体スキル、コーチングスキル、文章作成スキル、プレゼンテーションスキルを授業内で取り扱っており、学内の教育業績表彰者にも選出されている。