大学ゴルフ授業研究会

我が大学のゴルフ授業21 ~いのちを学ぶキャンパスでのゴルフ授業~小山慎一(帝京科学大学)

※この記事は掲載元(月刊ゴルフ用品界 GEW)の許可を頂いて転載しています。
掲載元 月刊ゴルフ用品界 2018年9月号(見本誌の申し込みはこちらから)

大学の紹介

帝京科学大学は、山梨県北都留郡上野原町(現上野原市)に1990年に開学しました。開学当時の名称は西東京科学大学で、理工学部のみの大学としてスタートしました。

1996年に大学名を帝京科学大学に変更し、大学院の設置や学科の再編などが進みました。

2007年には医療科学部リハビリテーション学科を設置し二学部の総合大学となり、翌2008年にはこども学部こども学科を設置し三学部体制となりました。

現在は東京都足立区の千住キャンパスと山梨県上野原市の東京西キャンパスを有する総合大学へと発展しました。大学のキャッチコピーは「いのちを学ぶキャンパス」。柔道部と陸上競技部を指定強化部としています。

授業風景

本学のゴルフ授業の歴史は古く、開学と同時に体育実技授業の種目のひとつとして始まりました。

ゴルフ用ネットでのスイング技術練習

ゴルフ用ネットでのスイング技術練習

「21世紀をリードしていく人材形成を目指す」という当時の教育目標に沿って、「生涯スポーツ」に最も適した種目のひとつとしてゴルフを取り入れました。

当初の授業方法は、ゴルフ以外のいくつかの種目を設定し、履修学生はグループごとに種目ローテーションを行い、全ての学生が一度はゴルフクラブを握ることになる方法です。

当時は体育実技授業が必修科目だったので、一学年約500名の学生全員がゴルフを体験したことになります。

現在は選択科目になってしまいましたが、それでもトータルで数千人の学生が大学の授業でゴルフを体験し、そのほとんどがゴルフ初心者でした。

教育目標である「生涯スポーツ」に沿うことが出来ていれば、日本のゴルフ場に多くの新米ゴルファーをデビューさせている。その一助になっていたら幸いです。

したがってゴルフ授業の内容も「ゴルフの楽しさを理解する」ことを重点として行っています。

ヘッドスピード測定器を使用しています

ヘッドスピード測定器を使用しています

ゴルフの一番の楽しさとは、広い場所で思いっきり遠くに飛ばすことでしょうが、残念ながら学内の授業では限られたスペースしかありません。ヘッドスピードを測る。ターゲットバードゴルフを行う。パターゴルフ競技会をするなど工夫をしてゴルフの楽しさを体験できるようにしています。

先生の気持ち

大学の授業は通常半期15回×90分で行われます。私のゴルフ授業では第一回目は教室で行います。なぜ大学の保健体育の授業にゴルフがあるのか。話はそこからスタートします。

「ゴルフが上手いだけの人間になってはいけない」「上手くなるのが目的なら授業ではなくゴルフスクールに行った方がよい」とはっきりと言います。

大学の教養科目としてゴルフを行うのですから授業の「目的」は「ゴルフを通して人間として成長する」これを板書します。続いてゴルフ授業の「目標」。1.「時間を守る」2.「忘れ物をしない」以上2点を板書します。これを示された学生は笑みを浮かべた安堵の表情になります。

しかし、「この15回の授業を通してこれが達成できるように努力しましょう」と言うと表情がキリッと引き締まります。将来どんな職業に就いたとしてもこの2点は重要です。

目標を持つことによって授業の目的を達成できることは学生も十分に理解してくれます。

2回目以降の実際の授業では、ただボールを打つのではなく、毎回「本日のテーマ」を決めて行うようにしています。さらに、一打席につき2人のペアを作り、互いにアドバイスしながら技術練習を行うようにしています。

このペアは毎回ランダムに変えて行います。このことによって、コミュニケーション能力の向上にも役立ちます。

ゴルフ以外の話でも禁止せずに他愛のない会話をしながらボールを打つことによって技術だけではなく人間的にも成長していきます。

14回目の授業ではビデオ学習を行います。内容はゴルフ場での一日、ルールとマナーについてです。このビデオを見ることによってゴルフは何よりもルールとマナーが大切であること。他人に不快な思いや迷惑をかけないこと、を理解してくれます。

ゴルフを通して人間として成長する。教養科目として行われる大学保健体育はゴルフのプロではなく教育のプロが行うものであることを常に心がけて授業を行っています。

先生の紹介

帝京科学大学 総合教育センター 保健体育科目准教授
小山慎一(こやま・しんいち)

小山慎一准教授

小山慎一准教授

1962年埼玉県浦和市(現さいたま市)生まれ。埼玉県立草加高等学校卒業。日本体育大学体育学部体育学科卒業。中学生から陸上競技を始め、高等学校、大学、実業団の陸上競技部で跳躍種目を中心に選手として活動を行った。全日本、東日本、関東の各大会で優勝の経験がある。陸上競技選手引退後は、公立中学校、公立高等学校の指導を経て、帝京科学大学に1990年の開学と同時に着任した。

現在の授業担当科目は講義科目「健康と生活」。演習科目「健康運動学基礎演習」。実技科目「健康体育」および「健康スポーツ」。主に実技科目において選択種目としてゴルフ授業を行っている。また、2012年から中央大学商学部兼任講師として「健康・スポーツ」の授業において選択種目「ゴルフ」を担当している。ゴルフとの出会いは大学2年の実習で初体験。その後しばらくは機会が無かったが大学の授業でゴルフを扱うことになり、急遽練習場の会員となって猛練習を行った。

主な所属団体は「日本体育学会」「日本陸上競技連盟」「日本ゴルフ学会」「大学ゴルフ授業研究会」。帝京科学大学陸上競技部部長。