大学ゴルフ授業研究会

我が大学のゴルフ授業22 ~大学体育が導く “トリプルウィン”の実現を夢見て~北徹朗(武蔵野美術大学)

※この記事は掲載元(月刊ゴルフ用品界 GEW)の許可を頂いて転載しています。
掲載元 月刊ゴルフ用品界 2018年10月号(見本誌の申し込みはこちらから)

大学の紹介

1929年に帝国美術学校(校長:北 昤吉、現・武蔵野美術大学)が東京都武蔵野市吉祥寺に開学。

1935年、同盟休校事件により帝国美術学校は分裂、吉祥寺を去った者らにより多摩帝国美術学校(現・多摩美術大学)が設立された。

発祥の地である吉祥寺には、現在も本学通信教育課程が置かれている。メインキャンパスは東京都小平市鷹の台にあり、11学科と大学院が設置されている。

学生総数は8000名弱で美大としては国内最大規模である。2018年に東京・市ヶ谷の旧ソニービルを取得し、2019年にはアート&ビジネスを考究する学科と大学院が新設される。この他、六本木、パリなど、教育・研究の拠点を国内外に多数所有する。

授業風景

武蔵野美術大学における教養体育は「健康と身体運動文化」と称する科目群で構成されている。研究室は、専任教員3名、非常勤講師21名、特別講師5名、教務補助員3名で運営されている。

1単位の体育実技が年間108コマ、2単位の演習が8コマ、2単位の講義科目が10コマ開講されている。

このうちゴルフ授業は年間10コマ開講されている。演習として開講される2コマのみテニスコートを利用しているが、それ以外の8コマは人工芝の総合グラウンドで行っている。また、通信教育課程の夏期集中授業でもゴルフが開講されている。

筆者の授業ではPGAカレッジゴルフテキストを使用しているが、ゴルフの技術面のみならず、様々な側面からゴルフを考える内容を含めている。例えば、過去には下記の皆様を講師として招いた(順不同)。
・梅宮研二氏(プーマジャパン)
・藤平 高氏(二木ゴルフ)
・永井延宏氏(ティーチングプロ)
・井上建夫氏(PGA日本プロゴルフ協会副会長)

上:梅宮氏、藤平氏、下:永井氏、井上氏

梅宮氏にはスポーツにおけるプロダクトデザインの重要性について、藤平氏にはゴルフグローブの選び方やゴルフの楽しみ方について、永井氏には用具や環境の特性に応じたゴルフの楽しみ方や上達法について、そして井上氏にはPGAのベーシックな指導理論について説いて頂いた。
(「美大生にこんなことを伝えてみたい」など、アイデアをお持ちの方、お知らせ下さい。)

先生の気持ち

大学体育は1949年の新制大学制度開始にあたり、GHQの強い要請により必修とされた。

当時の文部省が示した卒業要件の「120 単位および保健体育4単位」という記載からも読み取れるように、当初は「オマケ科目」として始まった。

その後も、日本学術会議(1961)、中央教育審議会(1971)、日本私立大学連盟(1981)などが、体育が必修科目であることへ反対意見を表明している。そして、1991年の大学設置基準改正(いわゆる大綱化)により、ついに体育は必修から外された。

大体連の安西祐一郎会長は、日本学術振興会理事長、中央教育審議会会長など歴任し、2015年には文化功労者として表彰されている。認知科学研究者としても著名な安西先生が、『いまこそ体育を必修に』(2017年6月19日付読売教育ネットワーク)という寄稿をしている。

この中で、大学体育の価値について、①体力向上、②コミュニケーション能力養成、③地域コミュニティ活性化への貢献、という3点を挙げている。特に、③については、大学ゴルフ授業やGちゃれの活動を例に論じている。

筆者も様々な場でこの可能性を述べたり書いたりしてきたし、実際に各地の大学において地元自治体や企業と連携した活動も行われている。

ゴルフ場体験「Gちゃれ」(於:八王子CC)

最近では国公立大学を中心に経営統合のニュースが相次いでいるし、今後数年で募集停止や統廃合する私立大学が激増するのは避けられないだろう。

人口減少や地方の衰退が現実味を帯びる中、地方創生に「大学ゴルフ授業」が貢献できるとすれば、「ゴルフの価値」「大学の価値」「地方の価値」のそれぞれを向上させる可能性も期待できる。

学生教育が第一であることは言うまでもないが、副次的・波及的な価値として、この“トリプルウィン”の実現を夢見ている。

先生の紹介

武蔵野美術大学 准教授
北徹朗(きた・てつろう)

1977年8月6日生まれ。岡山県立勝山高等学校卒業後、大学および大学院を修了し、2008年に昭和大学医学部において博士(医学)の学位を取得。その後、2010年4月に初めてパーマネントの職(帝京科学大学専任講師)を得た。2012年に武蔵野美術大学へ移籍。

現在所属する武蔵野美術大学では身体運動文化研究室の専任教員として、健康教育系の講義や演習、体育実技を担当している。

2014年からは大学院造形研究科博士後期課程の兼担教員となり「博士論文」と「造形芸術特論」の授業も担当している。

「アート&デザイン」に健康や身体運動あるいはスポーツマネジメントなどの観点を絡めた学術研究は未開の領域であり、博士の学位取得希望者を募集している。

また、2019年度に新設される「造形構想学部クリエイティブイノベーション学科」(市ヶ谷)所属の教員となることから、ゴルフを主体とするスポーツ産業に貢献できる教育・研究を発展させたいと意気込んでいる。

これまでに、玉川大学経営学部や事業構想大学院大学ではスポーツマネジメントやヘルスケアビジネス系の講義を担当し、電気通信大、国際基督教大、明治大、中央大、成蹊大、フェリス女学院大などでは体育実技を担当してきた。

現在、サイバー大学客員准教授、中央大学客員研究員なども務めている。