大学ゴルフ授業研究会

我が大学のゴルフ授業25 ~豊かな人間力を育むためのゴルフ授業~柳田 信也(東京理科大学)

※この記事は掲載元(月刊ゴルフ用品界 GEW)の許可を頂いて転載しています。
掲載元 月刊ゴルフ用品界 2019年1月号(見本誌の申し込みはこちらから)

大学の紹介

東京理科大学の起源である東京物理学講習所は、東京帝国大学(現・東京大学)を卒業した21人の青年理学士らにより、1881年(明治14年)に創立されました。 「理学の普及を以て国運発展の基礎とする」を建学の精神に掲げ、今年で開学137年の歴史と伝統を有しております。本学は、神楽坂・葛飾・野田・長万部の4つのキャンパスに7学部31学科、11研究科31専攻を擁する私学随一の理工系総合大学です。 現在は、およそ2万人の学生が自然・人間・社会の調和を目指し、実力主義の校是の下、勉学に勤しんでいます。 夏目漱石の「坊ちゃん」が本学の卒業生であるとされ、本学のマスコットキャラクターは坊ちゃんをイメージしたものとなっています。

授業風景

本学における体育授業は、一般教養科目における「人間科学」分野の選択科目に位置付けられている。ゴルフ授業も「シーズンスポーツ・ゴルフコース」としてこの中に含まれているカリキュラムのひとつである。 カリキュラムにゴルフ授業を導入して30年が経つ。シーズンスポーツという名の通り、本学のゴルフ授業は、9月上旬に集中講義(3泊4日)形式で行われ、半期1単位が付与される。 開催場所は、何度か変更を重ねながら、現在は新潟県妙高市の妙高サンシャインくるみが丘ゴルフコースおよび妙高サンシャインホテルで実施をしている。 参加者は40名程度で、神楽坂・葛飾・野田の3つのキャンパスから学生が集まり、毎年各キャンパスで履修者の抽選が行われるほど人気のプログラムとなっている。

撮影した動画から連続写真を作成

授業は、本学の専任教員と共に、ゴルフ練習場のレッスンプロにも指導を依頼し、その協力体制の下、実施されている。具体的な活動としては、オートティーアップ(屋根付き)の打ちっぱなし、バンカーやアプローチ練習、パッティング練習などの基礎練習を実施したのち、9ホールのショートコースを実践する。 最終日には全員参加のコンペがあり、表彰式(景品あり)も行っている。 また、ビデオによる動画や連続写真の撮影を行い、夜のミーティングでスウィングチェックを実施している。さらに、今年からドローンを導入し、ラウンドマナーやゴルフ場の雰囲気を学習することに役立てている。

先生の気持ち

本学のゴルフ授業は、①初心者・初級者を中心としたゴルフ技術の向上、②ゴルフ文化の理解と実践、③社会性・コミュニケーション能力の向上、の3つを目標として掲げ、総合的な人間力の向上を目的として実施。これらは基本的には、他のスポーツ実技の授業の目的と大きな違いはないと考えている。 しかしながら、本学においてこのシーズンスポーツの特異的な役割は、他キャンパスの学生と文字通り“寝食を共にする”ことによる協働・共働にあると考えている。 さらに、ゴルフコースでは、基本的に4人でラウンドするというゴルフの特性もこのことを促進する因子である。 本学の学生は、非常にまじめに物事に取り組む姿勢を示すものが多いが、一方で異文化に接することや、思考や表現などの性質(例えば、趣味やファッションなど)の異なる存在を受け入れ、協調する能力が乏しいと感じることが多い。グローバル化する社会において、多様な言語・文化を享受し、コミュニケーションを円滑に図ることは社会で活躍する基礎的な能力となっている。 壮大な話になってしまうが、この能力を高めるためにゴルフ授業は効果的であると考えている。 実際に参加した学生からは、「他キャンパスの学生と仲良くなれてよかった」、「知らない人とでもゴルフを介して会話をすることができた」などの感想も寄せられ、ラウンドを楽しむとともに、(苦手な?)コミュニケーションも楽しむ姿が見受けられると実感している。

ショートコースラウンドの様子をドローンで撮影

また、現場に“審判がいない”というゴルフ競技の特性も非常に重要なポイントであると考えており、誠実に物事に取り組む姿勢を養うばかりでなく、ロストボールを一緒に探索したり、その後のルールの適応についてメンバーと話し合ったりする中で、豊かな社会性を築く効果があるのではないかと考えている。

先生の紹介

東京理科大学理工学部 准教授
柳田信也(やなぎた・しんや) 1978年生まれ。栃木県立大田原高等学校卒業後、埼玉大学教育学部、同教育学研究科修士課程を修了し、2008年に東京都立大学理学研究科博士課程を修了。 博士(理学)。2008年4月より国際学院埼玉短期大学専任講師、2009年より東京理科大学総合研究機構ナノ粒子健康科学研究センターにポストドクトラル研究員として着任。 その後、東京理科大学理工学部助教、講師を経て2018年より現職。2017年より、東京理科大学理工学研究科国際火災科学専攻准教授も併任。 専門とする研究分野は行動生理学・運動生理学であり、主に動物モデルを用いた自発運動時の脳内神経機構について研究を進めている。 また、最近では併任の国際火災科学専攻における研究として、消防隊員の熱中症予防や身体負荷の定量などの研究にも従事している。 実技の専門はソフトボールであり、日本オリンピック協会強化スタッフ、日本ソフトボール協会男子強化委員、男子ソフトボール活性化プロジェクト委員、全日本大学ソフトボール連盟常任理事、関東大学ソフトボール連盟副理事長などを務めている。 大学における授業では、「健康スポーツ」「スポーツ方法」「シーズンスポーツ」などの実技種目と、「健康スポーツ科学」「人間安全工学」などの講義を担当している。シーズンスポーツでは、ゴルフコースの実習責任者を務める。