大学ゴルフ授業研究会

我が大学のゴルフ授業28 ~学内スポーツ施設を利用したゴルフマナーとルール理解~一川大輔(東洋大学)

※この記事は掲載元(月刊ゴルフ用品界 GEW)の許可を頂いて転載しています。

掲載元 月刊ゴルフ用品界 2019年4月号(見本誌の申し込みはこちらから)

大学の紹介

東洋大学は、明治20(1887)年に井上円了により「哲学館」として誕生。

哲学館は、明治36(1903)年に専門学校令により「私立哲学館大学」となり、井上円了の退隠後に財団法人となり、明治39(1906)年に「私立東洋大学」と改称された。

昭和24(1949)年に文学部から新たなスタートをきり、現在、文学部・経済学部・経営学部・法学部・社会学部・生命科学部・食環境科学部・ライフデザイン学部・理工学部・総合情報学部・国際学部・国際観光学部・情報連携学部の13学部と、大学院15研究科を擁する総合大学となった。

白山キャンパスに本部を置き、川越、朝霞、板倉、赤羽台の5キャンパスをもつに至る。

授業風景

本学のスポーツ健康科学実技Ⅰ・Ⅱは、基盤科目(キャリア・市民形成)に位置づけられ、Ⅰは1種目、Ⅱは2種目実施可能な選択科目(1単位)である。学生は卒業までにそれぞれ1度しか履修できない。

その他、留学生と日本人学生との交流を深めるための英語での実技科目も用意している。また講義科目(2単位)として健康科学と心理学を扱う授業を2種類用意している。

理工学部・総合情報学部の学生が学ぶ川越キャンパスには、授業用施設として多目的グラウンド・フットサルコート・テニスコート・体育館(トレーニング場含む)があり、また部活用施設として陸上競技場・硬式野球場・ラグビー場がある。

私が赴任した際には、2箇所の授業用グラウンドがあり、1箇所には鳥かごの打撃施設が7箇所設置されていたが緑地化に伴いその施設は撤去された。その代わりに現在の多目的グラウンド(写真1)は全面人工芝化となり、照明付きの施設(サッカー・アメフト・軟式野球用)となった。

学内コースラウンドでの様子

この施設では、ゴルフの実球等を利用できないことから、ゴルフの最も基本となるカップイン課題を主眼とするグラウンドゴルフを授業課題として採用している。

打撃練習では様々なターゲットに対する距離感を養い、実際のラウンドでは多くの障害物やハザードなどを設置した設定で8コースを用意し授業を展開している。

なお、近年ではアシックス社から様々なクラブやカラフルなディンプル付きボールやマーカーなどが発売されており学生の興味を引く道具を揃えるようにしている(写真3)。

先生の気持ち

本学のグラウンドゴルフ授業を担当する教員には、できるだけ実際のゴルフラウンドに応用できるルールとマナー、および技術特性を提供するように協力を依頼しています。

まず、各グループでの打撃練習およびコースラウンド前には必ず挨拶・自己紹介を行ってもらいます。

その後、短距離ターゲット(旗)に対してボールを止めるショット、長距離ターゲットに対するフルショット技術、ティーアップおよび地面上のボール状況によるショットの違いなどを指導していきます。

学生の打撃フォームは様々ですが、インパクトの重要性を説明し、教員や技術レベルが高い学生(ゴルフ部)のスイングを提示し(写真2)、その弾道(ボールの転がり)のイメージをしっかりと持つように説明します。

打撃練習でのスイングフォーム

その他、打撃練習やラウンド時における安全性確保の重要性、打撃順やスコアの付け方、ボールマークの仕方、人のターゲットライン上に配慮すること、アンプレアブルな状況での処置方法などを理解してもらいます。

またゴルフの特徴である複数人でコミュニケーション(会話)を図りながらプレーする楽しさや、自らに正直にスコアをつける重要性、最後の1打まで諦めずホールアウトすること、さらには低負荷の運動種目であっても非常に長い距離を移動することで様々な運動(心理的)効果があることも説明しています。

なお、雨天の場合は、これまで屋内施設でフィットネスや球技に置き換えることが多かったのですが、屋内用のスモールボールや、体育館床を傷つけないためのクラブカバー(写真3)が発売されていることを知り、今後はこれらの道具を利用した実技と実球を用いたパター練習を組み合わせることで、屋内での授業内容の充実に努めたいと考えています。

先生の紹介

東洋大学 理工学部生体医工学科 准教授 一川大輔(いちかわ・だいすけ)

1976年富山県生まれ。筑波大学体育専門学群、筑波大学大学院体育研究科を修了(修士:体育学)、山梨大学大学院医学工学総合教育部を2012年に修了(博士:医科学)。

2004年から2009年まで青山学院大学文学部にて助手、助教を務め、2010年より東洋大学理工学部生体医工学科講師として着任し、現在同大学准教授。

専門とする分野は、トレーニング科学(運動パフォーマンス評価法の検討)、運動生理学(運動による脳循環と体循環の応答)、スポーツバイオメカニクス(動作分析・弾道解析)、教育心理学(大学スポーツ実技の心理学的効果検証)等である。

ゴルフの研究に関しては、2014年(オーストラリア)の世界ゴルフ学会(WSCG)にてトレーニングとクラブヘッドスピードの関係性について発表し、2018年(カナダ)の同学会では、パッティングと弾道分析に関する発表を行っている。

近著として、「世界のスポーツ科学が証明するゴルフ新上達法則(実業之日本社)」がある。また書斎のゴルフ(WEB版)にて大人編・ジュニア編の連載を行っている。

現在、日本ゴルフ学会関東支部理事(研究部門)を務めている。本務校ではスポーツ実技科目として、グラウンドゴルフ(スポーツ健康科学実技Ⅰ・Ⅱ)の授業やその他多くのスポーツ実技の開講を運営している(http://kawa-pe.toyo-bme.jp/)。