大学ゴルフ授業研究会

我が大学のゴルフ授業32 ~大学体育で、教養としてゴルフを学ばせたい~新井健之(高千穂大学)

※この記事は掲載元(月刊ゴルフ用品界 GEW)の許可を頂いて転載しています。

掲載元 月刊ゴルフ用品界 2019年8月号(見本誌の申し込みはこちらから)

大学の紹介

伝統を礎に未来を見据えて進化する。
1903年(明治36年)に開学した高千穂学園は、創立以来今日まで、理事会、教員及び事務職員が一体となり、学生一人ひとりを家族のように支えていく「家族主義的教育共同体」という学園文化に基づいた教育を実践しております。

又、現在では、高千穂大学父母の会及び高千穂学園同窓会による様々な学生支援も行われております。「家族主義的教育共同体」の下、社会に貢献できる知的・人格的資質を備えた有為な人材育成を目標とする大学、それが高千穂大学です。

授業風景

高千穂大学では、教養科目の一つとして体育科目を2単位選択必修(体育科目としては必修)として設置しています。

科目は、教養として全体的な健康運動に対する理解を目標にしている「健康体力づくり」と、種目に特化した楽しみ方を学ぶ「生涯スポーツ(種目名)」、そして、その2科目同時・2コマ連続で行う「健康生涯スポーツ」の3種類を用意しています。ゴルフは、健康体力づくりの中で担当教員の裁量により選択的に行われています。ここでは、私が担当している「健康生涯スポーツ」におけるゴルフ授業を紹介します。

授業ではまず、マナーの重要性や日本における文化としての受入について簡単に話します。その後、室内においてパター(写真1)を行い、距離感を中心に方向性も同時に学習させます。次に、マットの下にテニスラケット(写真2)を入れ、打球と斜面の関係を体験させてます。

室内での授業風景

2コマ連続授業であるために、2コマ目は、100y程取れる天然芝のグランドに移動してPWでの実打を行います。

ラケットでの斜面作成

安全を第一に、マーカーで打席を作り打席には1名のみ、クラブもグループで1本に限定します(写真3)。

天然芝での授業風景

ボールは、ウレタンやプラスチック製を使用しています。フルショットも行いますが、目標へのコントロールショットを中心に方向性と距離の打ち分けを行わせます。全てにおいて、練習→競争を伴う本番→練習→本番と、楽しみながら自らの課題が見つけられるように仕向けています。

先生の気持ち

教養として、『ゴルフは楽しい』を学び、生涯スポーツとしてゴルフを選択させたい。

学生には健康と身体運動との関係を理解し、将来、数ある余暇の過ごし方の中で、何かしら体を動かすスポーツを選択して欲しいと思っています。そこで重要なのが、『楽しさ』だと考えています。「スポーツは楽しい」と思わなければ、テレビ視聴、ネットゲームなど数ある余暇の楽しみの中からわざわざスポーツを選んだりはしないでしょう。また、生涯スポーツとして重要な要素は、すぐに楽しめ長く楽しめる事、施設などが十分準備されている事だと思っています。そこで、高千穂大学体育では、テニス、スキー・スノーボードなどの学びを用意しています。前カリキュラムでは、健康運動Ⅰ・Ⅱ(ゴルフ)と、授業名にゴルフが入っており、1年間かけてゴルフを学ぶ授業がありましたが、現カリキュラムでは健康体力づくりの中の一部としてしかゴルフを行えていないのが現状です。

現在、学会や研究会等でゴルフの研究に関わらせて頂いていると、ゴルフの文化的な価値の大きさを実感します。かつて日本で全人口の1/3、ウォーキング、ジョギングに次いで、3番目に多くの人が楽しんでいたゴルフも、数が減ったとはいえ生涯スポーツとしての人気はまだまだ衰えてはいません。経営は苦しいと思いますが、施設も十分にあります。それらの条件から、ゴルフには大学生が教養として学ぶ価値が十分にあると思っています。しかし、一時的にでも楽しさが分からなければ、その後の選択肢になることはないでしょう。そして、授業では、楽しさの長期維持を考え、将来の上達方法の理解を重視しています。「また、この授業中にゴルフをやったりしないのですか?」と学生からいわれると、そのままゴルフを生涯楽しめるようになり、豊かな人生を送って欲しいと切に願います。

先生の紹介


■高千穂大学 人間科学部 教授
新井健之(あらい・たけゆき)

高千穂大学 人間科学部 教授
新井健之(あらい・たけゆき)

1967年栃木県生まれ。佐野高校、横浜国立大学卒業。横浜国立大学大学院教育学研究科修了。教育学修士。東京農工大学大学院工学教育部博士後期課程電子情報工学専攻修了。博士(学術)。
横浜国立大学・東京工業大学・電気通信大学等の非常勤講師を経て、2005年から2008年まで日本工学院八王子専門学校スポーツカレッジ専任教師として勤務。2009年から高千穂大学商学部准教授として着任し、現在は高千穂大学人間科学部教授。2019年から日本ゴルフ学会関東支部理事長。
授業は、運動教授法でゼミを開講している他、スキー・スノーボード、キャンプ、健康科学、体育(教職)を担当。民間団体の指導法も参考にするために、全日本スキー連盟スキー指導員・スノーボード指導員、日本キャンプ協会ディレクター1級、NSCA-CSCS等も取得している。
トレーニング科学分野にて2010年から文部科学省科学研究費(課題番号22500589,22500588,25350781,25350778,16K01672,16K01670,19K11472)の助成を受け、飛躍的なトレーニング効果が期待できる対象物への注意配分により変化する運動予測特性を考慮した視覚トレーニングの開発を行っている。その中でも、ゴルフに関しては、パッティングを中心にコントロールショットの実験を進めており日本ゴルフ学会等で報告を行っている。


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