※この記事は掲載元(月刊ゴルフ用品界 GEW)の許可を頂いて転載しています。
掲載元 月刊ゴルフ用品界 1月号(見本誌の申し込みはこちらから)
1990年、山梨県上野原市に帝京大学グループ3番目の大学「西東京科学大学」として開設される。理工学部のみの単科大学(1学年の定員400名)であった。1996年に大学名を「帝京科学大学」と変更し、2007年に理工学部を生命環境学部と名称変更すると共に医療科学部を開設、2008年にこども学部(2017年教育人間科学部変更予定)を開設した。2010年、千住キャンパス(足立区)、山梨市キャンパスを開設し、現在3学部13学科(1学年の定員1220名)の3キャンパス体制となる。建学の精神「人類の将来を正しく見据え、生命の尊厳を深く学び、自然と人間の共生に貢献できる人材を育成し、持続可能な社会の発展に寄与する」の基、いのちをまなぶキャンパスとして最先端の教育と研究を行っている。
千住キャンパスは、 隅田川沿いの住宅街にある。ゴルフ専用練習場やゴルフケージの備えはなく、グラウンドの一周250mトラックの内側にある人工芝のフィールドで行っている。グラウンドの周囲は人や車の通行量が多い道路と民家に囲まれているため、本物のゴルフボールを打つことはほとんどなく、主にバードゴルフ用の羽付きボールを使用している。全員が初心者であることも踏まえ、PWを中心とした短いクラブを用いてのスイングつくりを基本としている。授業回が進むとドライバーなどのウッド系も使用するが、当たらない、飛ばない、曲がると学生が嘆く。黙ってみていると、そのうち短いクラブに持ち替えて基本練習を始める。悪戦苦闘しながらも、学生なりに問題解決しようと取組む姿を見るのはとても楽しい。
授業はシラバスに従い、1回90分の授業を15回行う。とはいえ、雨が降れば屋外での活動は制限され、活動内容の変更を余儀なくされる。
写真①は今学期5回目(11月7日)の授業風景である。力みのない大きなスイングで、ボールを遠くに真っすぐ飛ばすことを課題に取り組んでいる。写真②は7回目(11月24日)の授業風景であるが、降雪のために屋内でアプローチの練習を行っているところである。
現在はグラウンド内にショートコースをつくり、仮想の池や川、OBゾーンを設けるなどしてラウンドプレーを楽しんでいる。より実践的な授業を展開しながら、楽しむことと同時にルールやマナーも学んでいるところである。
大学でなぜ体育の授業があるのだろう。大学体育の意義は、一般的な言い方をすれば、健康で活気に満ちたキャンパスライフの実現にある。運動習慣の確立、気分転換、健康生活の維持、仲間づくりなどもある。では、ゴルフの授業で、学生は何を学びたいのか。
非常勤をしている国際基督教大学(ICU)において、初回の授業時に簡単なアンケート調査を行った。結果を簡潔に示すと以下の通りである。ゴルフ経験者の割合は54.8%と過半数であった。ゴルフ授業を選択した理由は、「ゴルフが好きだから」「興味があるから」が83.8%であった。ゴルフ授業に求めるものは「技術の修得」が87.1%であった。「ゴルフ場でのラウンドを希望する」割合は、90.3%であった。
今日、高校でもゴルフ授業を行うところが増えてきている。加えてグローバル化が進み、ICUのように海外でゴルフを経験してきた帰国子女も多い。学生の多様化したスポーツのニーズにゴルフがあり、上手になってラウンドプレーをしたいと考察された。
私は授業でレッスン用DVDを視聴させたり、市販されている本などから作成した資料を基に授業を進めたりしている。ゴルフの基礎的部分であり、とても重要な内容を取り上げている。しかしゴルフ経験の有無、体格や体力の異なる学生一人ひとりに対して、その実力に見合った指導やアドバイスを行うことに全く自信がない。授業として純粋にゴルフを楽しんで欲しい、スキルアップして欲しいと望みながら、その一方で確固たるゴルフ理論や指導能力を備えているわけではない。この現状に自責の念を抱いているのである。
ゴルフ授業を選択した学生が継続的にゴルフを楽しみ、多くの仲間とラウンドプレーができる、その一助となるよう私自身がゴルフの基礎理論や指導方法について学ぶ必要があることを、いま強く実感している。
橋口剛夫(はしぐち・たけお)
1957年、宮崎県宮崎市生まれ。宮崎大学教育学部卒業。日本体育大学にて体育学修士号、共立女子大学にて博士号(学術)を取得。日本体育大学研究員、日本体育大学女子短期大学専任助手、日本体育大学助手兼務後、西東京科学大学(現、帝京科学大学)に奉職。現在、同大学こども学部学校教育学科中高保健体育コース教授。専門科目では講義として生理学・運動生理学、トレーニング論、演習として球技を中心とした運動指導法、実技として各種球技を担当する。また、一般教養としての保健体育科目でも講義、演習、実技を担当する。研究分野は健康科学である。継続的な運動の実践が精神的健康も含めた健康や体力に及ぼす影響について、生理学的指標やアンケート調査法を用い明らかにしようとしている。一方、運動することで生体に生じる酸化ストレスと健康との関わりについても研究を進めている。スポーツは、高校までにバスケットボール部、軟式野球部、バレーボール部、大学生時代はハンドボール部に在籍し活動した。
所属学会は日本生理学会、日本体力医学会、日本体育学会、日本運動生理学会、日本運動・スポーツ科学学会(理事)、日本臨床生理学会(評議員)、日本時間生物学会(評議員)、日本ゴルフ学会(関東支部理事)、日本酸化ストレス学会他。
現在、国際基督教大学(ICU)にて非常勤講師をしており、初級、中級クラスを担当している。