※この記事は元サイト様(日本経済新聞社)の許可を頂いて転載しています。
http://www.nikkei.com/ 及び 日本経済新聞12月9日付
「月刊ゴルフ用品界」という雑誌はゴルフ用品メーカーと小売店を結ぶ商品情報誌だった。しかし、社長兼編集長の片山哲郎(54)は、今やそれでは追いつかない時代と語る。片山は日本ゴルフジャーナリスト協会会長でもある。ゴルフ場、練習場、アパレルなどトータルなゴルフ産業情報に自分たちの考察と提案を入れてきめ細かく発信している。
日本ゴルフサミット会議の標語「ゴルフをみんなのスポーツへ」に「みんなの、のはずがない」と反発する。「アスリート系」「健康寿命延伸」「婚活ゴルフ」「若者のファッションゴルフ」など実際のゴルフは多様化し細分化していく。生ぬるい標語では対応しきれていない現実がある。
片山は「ゴルフ界は自らゴルファーを創造した経験がない」と言う。
会社の上司が部下にゴルフをやらせ、自分のクラブをあげてゴルフ場に連れて行き「クラブ3本持って走れ」とマナー指導もし、時にはレッスンまでした。「接待需要がゴルファーを育てた。バブルが破裂した後もゴルフ界の各団体のトップの人は、いまだにその成功体験から抜け出ていない。今はまだ見えないが、ナイアガラの滝つぼがすぐそこに迫っているのに」
片山が活性化の目玉として注目するのが、即戦力としての大学生である。ジュニアは消費につながるまで時間がかかる。武蔵野美術大准教授、北徹朗(39)のゴルフ授業研究によると全国782大学のうち延べで581のゴルフ授業があることが分かった。意外にもソフトボールなどに比べゴルフは倍の大人気種目で年間推計10万人が授業を受けているという。
北リポートに用品業界の期待はグンと高まった。実際の授業といえば、“鳥かご”と呼ばれるケージやテニスコート、体育館。真横に並ばせて一斉に打ちっ放し。古いパーシモンや女子が男物のクラブを振り回している。用品業界はこぞってクラブの寄贈を申し出た。
ところが業界の試打クラブは7番アイアンが定番。北によると「飛び過ぎて大学では使えない」から多くのクラブが倉庫で眠る。学生にゴルフのイメージを聞くと「お金がかかりそう」「おやじのスポーツ」と言うが、授業後のアンケートでは「やってみて良かった」と変わる。昨年からゴルフ場の協力を得て食事付き2、3千円の実費で「4ホール体験」をさせている。「感激」した学生のリピーターが増えている。
=敬称略